【メディカルトピックス】高血圧・心血管病について
2016年3月24日(木) 総合
2006年国民健康・栄養調査によると、40〜74歳の日本人のうち、男性で6割・女性で4割が高血圧であると言われており、高血圧は日本で最も患者数が多い病気とされています。
厚生労働省の「健康日本21」における試算によれば、国民の血圧が平均2mmHg下がれば、脳卒中による死亡者は約一万人減り、新たに日常生活活動が低下する人の発生も3500人減ることが見込まれています。
また、循環器疾患全体では二万人の死亡が防げるとされており、治療による効果が比較的現れやすい病気であると言えます。
ところが、同調査では高血圧と診断された方の中で実際に継続して治療を受けている方は、約20%と言われており、まだまだ高血圧に対する治療が十分されているとは言い難い状況が続いております。
治療を受ける方が少ない理由として
① 高血圧自体が全くの無症状であること
② 治療が長期化することを嫌うため
③ 医療費が気にかかる
④ 高血圧自体を『怖くない』と思い込んでいるから
などの意見が多く、治療の必要性についてなかなかご理解を得られにくい病気と言えます。このような『誤解』についてお話ししたいと思います。
① 高血圧自体が全くの無症状
受診される患者さんの中でも、「最近頭痛がひどいので高血圧と思う」「めまいがしたから血圧が高くなったと思う」といった、ご相談を受けることがありますが、高血圧による自覚症状は一切ありません。高血圧は別名『サイレントキラー(静かな殺人者)』という異名を持つ自覚症状を起こさない病気です。
むしろ症状が無いからこそ、知らないうちに体を蝕み、致命的な心臓病・血管病を引き起こすのです。ですから、『症状が出たら受診しよう』と思っている方には、大きな病気を未然に防ぐ機会を逃す危険性があるということになります。
② 治療が長期化することを嫌う
一部の原因がはっきりしている高血圧(二次性高血圧と言います)を除き、ほとんどの高血圧は原因がはっきりしない本態性高血圧と呼ばれています。
血圧上昇と密接にかかわる危険因子として左図の事などが有名ですが、これらを可能な限り避ける・改善するようにしても、残念ながら、高血圧が改善しない方が数多くいらっしゃいます。もちろん高血圧の危険因子を改善するだけで薬を使わずに高血圧が改善する方も居ますが、どちらにしても継続して血圧を測定し、適切な値の範囲内にコントロールする必要があります。
一部で『いったん始めた薬は止められないから飲みたくない』という方が居ますが、高血圧と診断された方は薬を飲んでも飲まなくても血圧に注意が必要な状態が一生続くことに変わりはありません。高血圧そのものは無症状ですが、いったん脳卒中や心臓病・動脈硬化を引き起こすと、寝たきりや生活制限が必要な状態に陥る危険性があります。高血圧を治療することで確実にそのリスクを減らす効果が期待できます。
③ 医療費について
高血圧は長期的に継続して治療が必要となる病気ですので、薬代に代表される医療費の経済的負担を重く感じる方も多いと思います。
血圧を下げる薬は様々なタイプのものがあり、代表的なものとして
・カルシウム拮抗薬 ・ACE 阻害剤 ・アンギオテンシン受容体拮抗薬 ・降圧利尿薬 ・β遮断薬 ・α1遮断薬
などが挙げられますが、比較的安価なジェネリック医薬品が存在するものもあります。
言い換えると、高血圧がありふれた病気であるからこそ、これだけ沢山の種類の薬が開発されており、それを適切に組み合わせることで患者さん一人一人のニーズに合った調整を行ってきている治療の歴史のあらわれとも言えます。今飲まれている薬に不安があったり、調整のご希望があれば遠慮なくご相談ください。
④ 高血圧は怖くない病気?
自覚症状が全くなく、今すぐに体調不良を起こさないため、高血圧を過小評価する方が多いのですが、『何に気を付ければ元気に長生きできますか?』という問いかけには自信をもって『高血圧に気を付けてください』とお答えできます。よく昔から『風邪は万病のもと』と称されていますが、『高血圧こそ万病のもと』と考えられています。
人間は何が原因で命を落とすのか?について想像してみてください。
日本人の死因上位を調べると、年度によって多少順位変動はありますが、ここ数年はがん・脳卒中・心臓病のいわゆる『3大疾病』と肺炎が上位を占めています。肺炎は寝たきりなどの生活制限が必要な方に多く生じる病気ですので、3大疾病を既に発症された結果、肺炎で死に至ったケースが多々含まれています。
3大疾病のうち、がんを予防することは比較的難しいことになりますが、脳卒中・心臓病(冠動脈疾患)の原因で最も多いのが高血圧です。高血圧の治療は比較的簡単に行うことができます。そういう意味では『高血圧は簡単にしっかりコントロールできるので怖くない病気だ』と誰もが言えるように、放置せず治療を受けていただきたいと願っています。
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