【メディカルトピックス】糖尿病について
2016年5月20日(金) 総合
糖尿病の合併症
糖尿病に対する治療は、合併症の発症を予防・進展を抑制し、糖尿病ではない人と変わらない生活の質や寿命を確保することを目標として行われます。その「合併症」には、細小血管(細い血管の)合併症と大血管(太い血管の)合併症があります(図1)
前者は、神経障害→網膜症(眼の合併症)→腎障害の順で出現し、血糖のコントロールが悪いと、図2のような糖尿病発症からの年数経過で、合併症が出現することが多いと言われています。発症の順番は“しめじ(神眼腎)”と覚えると分かりやすいと思います。
後者には、脳(脳梗塞、脳卒中など)、心臓(心筋梗塞、狭心症)、足(足壊疽など)の合併症があります。また、これら以外にも最近では認知症や癌、歯周病やうつ病も糖尿病の新たな合併症として注目されています。
これらの合併症を予防するために、日本糖尿病学会は「熊本宣言2013」で、一般的には『HbA1c7%未満に管理すること』を推奨しています。HbA1cの管理基準は改訂され(図3)、
① 血糖正常化を目指す際の目標は6%未満
② 合併症予防のための目標は7%未満
③ 治療強化が困難な際の目標は8%未満
となっています。また、それらの治療目標は年齢や罹病期間など様々な面を考慮し個別に設定されます。HbA1cは一般的に血糖コントロールの指標(1〜2ヶ月の血糖を反映するもの)となっていますが、数値にピンとこない方もいらっしゃるのではないでしょうか。HbA1cに30足して体温に例えてみたら、感覚として分かりやすいかもしれません。例えば、HbA1c7・5%ということは体温が37・5℃あるのと同じであり、薬( ≒抗糖尿病薬)が必要です。9・2%では39・2℃と同じで、とてもきつい状態であるため注射( ≒インスリン注射)が必要ですね。
「HbA1c7・0%をきって、6%台(36℃台の平熱)を目指す」と考えて頂ければ分かりやすいと思います。
SGLT2阻害薬について
最近、患者さんが「糖尿病の新しいお薬で、痩せる薬があるって聞いたよ」とお話されることがあります。それは、 SGLT2阻害薬という新しい糖尿病の経口薬(飲み薬)です。この機会に、SGLT2阻害薬とは何か、メリット・デメリットを含めたお話をさせて頂きます。
腎臓には、血液中の必要なものを体内に取り込み、不必要なものを尿として排泄する働きがあります。SGLT2は腎臓内に限定的に存在し、ブドウ糖を体内に再吸収する役割があります。この阻害薬は、そのSGLT2に作用し、糖の再吸収を抑制することで、尿に糖を出し血糖値を低下させます。
特徴
SGLT2阻害薬は糖を尿中に排泄することで血糖値をさげるので、カロリーの減少につながり体重減少が期待できるため、肥満の方には良い適応となります。一方、次のような注意点も報告されています。
● 頻尿・多尿による脱水。(特にご高齢の方)
● 尿路・性器感染症(特に女性)
● ケトン体(アセト酢酸、β ベータヒドロキシ酪酸、アセトン)上昇
● 腎臓の機能が落ちている方には効果が弱まる可能性がある
● 腎機能障害が重度の場合、妊娠されている場合は使用できない
● 皮膚に湿疹ができることがある
どの薬剤もそうですが、SGLT2阻害薬にも記載のようなメリット・デメリットがあります。医師により、患者さんお一人お一人に
合ったお薬か判断させて頂き、メリットが上回る方に投薬をご提案させて頂きます。
■著者紹介
柳田育美 医師
[資格認定]
日本内科学会認定医
[所属学会]
日本内科学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会
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