【メディカルトピック】フレイルと糖尿病
2016年11月15日(火) 総合
「フレイル」とは
現代の高齢化社会で話題になっているフレイルとはFrailty(虚弱)の訳語で、「加齢により身体的・精神的に弱くなった状態」を指します。要介護に至る前段階である「要介護予備軍」と言われています。ここで重要なのが、フレイルは適切な評価・予防・治療を行うことによって健康状態に戻りえるということです。しかし、身体機能障害に至ると改善が難しく、簡単にはフレイルの状態に戻ることができません(図1)
つまり、早い段階でフレイルの評価を行い、介護が必要となる前に予防することが大切であり、当院でもフレイルについての問診など、取り組みを始めています。
では、フレイルにはどのような徴候があるかと言いますと、
「最近、体重が落ちている」、「なんだか疲れている」、「手の力(握力)が落ちた」、「動くことが少なくなった」、「歩くスピードが遅くなった」などの身体的なものだけでなく、「なんだか憂うつである」、「もの忘れが多いと言われる」などの、精神的なものや認知機能などによるものも含まれます。
まずは、みなさん次の頁の表で「フレイルチェック」を行いましょう。
「フレイル」と「糖尿病」
糖尿病の方もフレイルになる可能性はありますが、糖尿病のコントロールが悪いとさらにフレイルになりやすいという報告があります。逆に、フレイルがあると血糖コントロールが悪化しやすく、低血糖になりやすいとの報告もあります。つまり、フレイルも糖尿病も併せ持った場合、健康寿命(健康に過ごせる年月)を短くしてしまう可能性があります。そのため、フレイルについての早めの評価と予防が大切になります。
糖尿病は『合併症の予防のためにはHbA1cを7%未満にしましょう』という目標が一般的でした(図2)。しかし最近では、それは全ての糖尿病患者さんにあてはまることではなく、先日、日本糖尿病学会で高齢者の糖尿病患者に対する治療目標が発表されました(図3)。
認知機能障害があるかどうか、手段的ADL低下(外出・買い物・調理などに介助が必要)、基本的ADL 低下(移動・入浴・トイレなどに介助が必要)があるかどうかによりカテゴリーⅠ〜Ⅲに分けられます。さらに、重症低血糖を起こすリスクがある薬剤を使用しているかどうかで分類され、リスクがある場合は記載のようにHbA1cの下限が設けられるようになりました。
例えば、ご高齢の糖尿病の方で、一人で買い物は難しく(カテゴリーⅡ)、インスリンを使っている方であれば、HbA1c の目標値は8.0%未満(下限7.0%)となります。
高めの血糖コントロール目標値設定の必要性
なぜこのような高めの設定かというと、血糖が高い場合は糖尿病の合併症などのリスクがもちろんありますが、血糖が低すぎる場合でも「物忘れ」や「うつ」、「脳卒中」、「心筋梗塞」などの頻度が増えると報告されているからです。このため、ご高齢の方を対象とする場合は、高血糖を治療するだけでなく低血糖をできるだけ起こしにくい薬剤での治療が求められています。もちろん食事・運動療法のみで治療している場合や、すでに低血糖を起こしにくい薬のみで治療している場合は下限を設けずに可能な限りコントロールを行うようにといわれています。
このように、フレイルや認知症、薬剤などを評価した上で、患者さん一人ひとりにあった目標に向かって糖尿病治療を行っていくことが大切になります。糖尿病で通院中の方は、ご自身のHbA1c の目標値がどのあたりなのか、気になる方はいつでもご相談ください。
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