風疹と先天性風疹症候群
2019年6月20日(木) 患者さん・ご家族へ
昨年から今年にかけ風疹の流行がテレビなどで話題になっています。
福岡県では今年1月から2月24日までの8週間で44名の風疹患者さんが報告されており、東京、神奈川、千葉、大阪に次いで全国で5番目に多い患者数です。
今回、風疹の特徴や先天性風疹症候群という病気についてお話しします。
■風疹とは
風疹は風疹ウイルスに感染することで起こる病気です。
ウイルスに暴露された2週間後くらいに発熱と全身に赤いポツポツした発疹が出ます。首や耳の後ろのしこり(リンパ節の腫れ)を触れるのが特徴です。
症状は比較的軽く、特別な治療をしないで熱や発疹は3日程度で治まります。
風疹は、インフルエンザと同じ様に、患者さんの咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを吸い込むことで感染する飛沫感染です。
発疹がでる1週間前から発疹出現後1週間くらいまでは感染力があると言われています。
ただし、15〜30%くらいの人はウイルスに感染しても症状が出ない(不顕性感染と言います)場合があります。
不顕性感染の場合、知らぬ間に人に感染させる可能性があり注意が必要です。
一度感染すると終生免疫を獲得し二度と風疹にかかることはありません。
■先天性風疹症候群(CRS)
風疹の多くは比較的軽い症状で治まる病気ですが、妊婦さんにとっては大変心配な病気です。
妊娠初期(妊娠20週まで)の妊婦さんが風疹にかかると、お腹の赤ちゃんも風疹ウイルスに感染することがあります。感染した赤ちゃんが、難聴、心臓病、白内障などの障害を持って生まれる事が有り、先天性風疹症候群(CRS)といいます。
2012年から2013年にかけ日本で風疹が大流行した時も、全国で40名以上の先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれています。
先天性風疹症候群は、風疹にかかる時期が早いほど発症する確率が高くなります。
妊婦さんが不顕性感染の場合も赤ちゃんには感染する可能性がありますので、妊婦さんは風疹に対する抵抗力(免疫)があるか確認しておく事が大切です。
感染を防ぐ充分な免疫が無い場合、妊娠中はワクチン接種が出来ないので、風疹流行時期には外出を控えるなど感染しないように注意する必要があります。
また、出産後は次の妊娠前にワクチンを接種しておく事も大切です。
厚生労働省は前回の流行後に、「早期に先天性風疹症候群の発生をなくす事、2020年度までに風疹の排除を達成する事」を目標としましたが、残念なことに今回の流行でも今年すでに1名の先天性風疹症候群の赤ちゃんが確認されました。
国のワクチン政策の変遷の中、過去に一度も風疹ワクチン接種を受ける機会がなかった昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性は、当然風疹に対する免疫が弱く、最近の風疹流行の中心もこの年齢層の男性です。
厚生労働省は、今年の4月から2022年3月末までの緊急措置として、この年齢の男性を対象に風疹抗体価検査を行い、抗体価の低い人には風疹ワクチン接種を行うことを決めました。
福岡市でも既に妊婦さんの感染を防ぐため(対象は限定されますが)、無料での抗体検査とワクチン接種の補助を開始しています。風疹の流行を防ぎ先天性風疹症候群をなくすため、必要な方は是非ワクチン接種を受けるようにして下さい。
■風疹を疑ったら
風疹を疑うような症状がある場合、医療機関に電話連絡し受診の相談をして下さい。
【風疹の主な症状】
・発熱
・全身に赤いポツポツした発疹
・首や耳の後ろのしこり(リンパ節の腫れ)が触れる
感染を拡大させない様、公共交通機関の利用は避けるようにして下さい。
■麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)
風疹を予防する唯一の手段はワクチン接種です。
現在日本では定期予防接種として麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を、1歳時に1回、小学校入学前の年に1回の計2回接種する事になっています。
1回だけでは十分な免疫を得られない場合もありますが、2回の接種を受けていれば風疹や麻疹に感染するリスクは殆どありません。
お子さんを守るために2回の定期接種は必ず受けるようにして下さい。
参考文献 ⑴ 国立感染症研究所ホームページ ⑵ 2018予防接種に関するQ& A集(第18版、日本ワクチン産業協会)
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